地雷についての補足説明




これから、地雷撲滅運動の流れなどを説明していく前に、少しだけ地雷についての補足説明をさせてください。
説明するのは、対車両地雷と、アンチ・ハンドリング・デヴァイス、そしてスマート地雷の3点についてです。



対車両地雷について



「地雷ってなんだろう」で説明したように、地雷には、戦車の破壊を目的とした大型の「対戦車地雷(ATM Anti-tank mines)」と、人間をターゲットにした小型の「対人地雷(APM Anti-personal mines)」との二種類に大きくわけられます。

今、世界にばら撒かれている1億1900万を超える地雷は、多くが「対人地雷」です。
人道的立場から見て、規制しようと各国やNGOなどの団体が撲滅に向けて働きかけているのも、この「対人地雷」なのです。

しかし、人と戦車両方をターゲットにした地雷もあるのです。「対車両地雷」と呼ばれています。
「対車両地雷」は、小型の「対戦車地雷」か、大型の「対人地雷」をさしますが、どの地雷がどの種類に入るかなどは、はっきりした基準がありません。

「対車両地雷」は、「対戦車地雷」よりも軽い重量に反応します。火薬の量は、「対人地雷」よりも多くなっています。
そのため、爆発力も「対人地雷」よりも大きく、人と乗用車、救急車、四輪駆動車やトラックといった、一般車両をターゲットとしています。

アフリカのアンゴラでは、この「対車両地雷」で、地雷除去隊員が移動中に被害に遭っています。
もちろん、移動中の一般市民もです。



アンチ・ハンドリング・デヴァイスについて



「簡単に取り除けないの?」でお話ししたように、地雷の除去技術は全くといっていいほど進歩していません。
しかし、埋設した地雷の除去を妨害し、守るシステムが急速に発達しました。それにより、地雷の発見や除去を一層難しいものにしています。これらのシステムを、取り扱い防止装置(アンチ・ハンドリング・ディヴァイス)あるいは、妨害防止装置(アンチ・ディスターバンス・ディヴァイス)と呼んでいます。

対戦車地雷は、対人地雷と明確に区別されて、今までは廃絶運動の対象になったことはありません。
しかし、取り扱い防止機能のついた対戦車地雷はオタワ・プロセスで決められた禁止条約の対象にはなっていませんが、 現実には、除去隊員を大きな危険に晒しているため、対戦車地雷も禁止すべきだとの声も上がっています。


アンチ・ハンドリング・ディヴァイスのいろいろ
1.傾きに反応 地雷があらかじめ設定された角度に傾くと、予備点火装置が作動し、起爆する。
中国製72B型が有名。
2.磁力の接近 地雷探知器(金属探知器)の磁場に反応、起爆する。
3.電圧の急降下 電子回路を持つ地雷を守るシステム。
ワイヤーの切断や、バッテリーの絶縁に反応し、起爆する。
4.光に反応 地雷を持ち上げることを妨ぐシステム。
光に反応する電池が、対戦車地雷の底面に取り付けられており、地雷が地面から離れて電池に光が当たると起爆する。
5.対人地雷の併用使用
●上に設置
数キロというわずかな重量で、対戦車地雷を起爆させることができる。
●側面に斜めに設置
探知のために、除去作業員がプロッター(金属棒)を差し込むことになる角度にあわせて、対人地雷を設置する。
●下に設置
圧力解除式(圧力がかかっているときは起爆しないが、その圧力が無くなった時点で起爆する)の対人地雷を、対戦車地雷の真下に設置する。
対戦車地雷を持ち上げることにより、対人地雷が起爆する。




スマート地雷について



一定期間が過ぎると、地雷に付いた装置により自動的に起爆する、自己破壊装置(Self-destruction mechanism)や、作動しなくなる自己不活性化機能(Self-neutralizing system)の付いた新型地雷のことを、スマート地雷と呼んでいます。
スマート地雷とは、旧式の地雷をばかな地雷(dumb mines)として、それらと区別するためにつけられた名前です。
地雷の設置時には、地雷原の記録をする義務がありますが、空中散布や特殊な車両からの遠隔散布をしてしまうと、記録をとることは不可能になります。
その逃げ道として開発、導入されたのがこのスマート地雷です。

スマートという形容詞がつくものの、その問題点は指摘されています。

自己破壊装置付地雷の問題点
製造・設計のミス、あるいは空中散布の高度、スピード、角度、さまざまなケースにより、自己破壊装置が正常に作動しない場合がある。
このことは、設計者、軍事専門家も認めている。正常に作動しない確立は5〜30%といわれている。

自己不活性化機能付地雷の問題点
非作動率は、5〜30%といわれている。しかし、その対人地雷が確実に不活性化しているかは、結局誰かが踏むまではわからない。
もし仮に全ての地雷が自己不活性化したとしても、その土地が地雷原であることには変りない。人を死傷させなくても、「使用可能な土地からの締め出し」という対人地雷の第二義的機能は、果たされることになってしまう。
さらに、スマート地雷は大量散布が前提として開発されている。自国や一般人の安全を考え、短命のスマート地雷を設置した場合、効力を保つためには前線の移動とともに散布を続けることになる。住民の帰還と土地の再利用を可能にするには、気の遠くなるような時間を費やした除去作業が必要となる。
除去には従来の地雷とまったく同じ時間と手間がかかる




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