資料展示室


JAHDS

JAHDS(人道的地雷除去支援の会)

●報道資料●
●設立趣意書●
●設立までの活動●
●参考資料●

<報道資料>
1998年3月18日

「人道目的の地雷除去支援の会」JAHDS発足について

人道目的の地雷除去支援の会

世界各地に残留している対人地雷の問題解決へ向けて、現地の地雷除去組織の支援を目指した世界で初めてのNGO「人道目的の地雷除去支援の会」(略称 Japan Alliance for Humanitarian Demining Support)が3月18日発足いたしました。

JAHDS発足の目的は、地雷除去作業を安全かつ効率的に行えるよう、民生技術を結集して最新の地雷探知技術を完成し、現地の地雷除去組織に提供することです。また単なる探知技術の提供にとどまらず、除去チームが作業に集中するために必要な各種キャンプ資材・医療・通信・輸送などのトータルな支援も段階的に実施してゆく予定です。

対人地雷については昨年12月、その廃絶を目指して日本を含めた120ヵ国あまりが禁止条約に署名しましたが、世界には現在も1億数千万個の対人地雷が埋設・放置されたままです。内戦後のカンボジアでは今も6百万個もの地雷が残留し、一般市民や幼い子供たちもその犠牲になっており、世界中では毎年2万8千人以上の人々(20分に1人の割合)が死傷しています。さらに、残留地雷により土地が汚染されているために復興が妨げられています。

一方で、復興のための地雷除去は一向に進んでいません。冷戦後、国連が主体となって各国の軍隊の協力のもと除去活動を開始しました。ところが、紛争が長く続いた国々では、地雷が辺り構わず埋設・設置され、ブルドーザー、トラクター等を用いた軍事的地雷除去方法では、人道(復興)目的の地雷除去の求める100%の除去率が達成できないことが判明しました。現在も様々な方法が試されていますが、やむなく従来の金属探知機を用いた除去方法が採用されています。しかし、金属をほとんど用いていないプラスチック対人地雷を探知するために感度を上げて使用するので、針一本程度の金属にも反応してしまい、信号音の発した箇所すべてを注意深く掘り出す作業が根気よく続けられています。作業が大変危険かつ非効率であるために、全世界で除去オペレーター総数は1万人足らずであり、年間に除去できる地雷の総数は10万個程度です。

この問題を解決するため、発足前のJAHDS準備室では92年国連初代地雷除去責任者ブラグデン氏の訪問と要請をうけて以来、道路陥没の原因となる路面下の空洞を発見する民生技術コンセプトを、6年がかりで地雷探知に応用すべく研究を進めてきました。97年10月にようやく完成した試作機を用いて、(財)日本ユニセフ協会の支援のもと、世界最大規模の現地人による人道目的の地雷除去組織CMAC(カンボジア地雷活動センター、UNTAC下の地雷除去トレイニング・ユニットMCTUの後身)の協力により現地テストを実施しました。その結果、従来困難であったプラスチック地雷の発見や、世界で初めて金属探知機では探知不可能であった酸化アルミ鉄分を含むラテライト土壌でも地雷を探知し、CMACも絶賛する成果と信頼関係を結ぶことができました。

地雷が除去されてわずかな広さでもその土地が安全になれば、すぐ畑になり、やがて家が建ち、学校や病院ができます。人々の生活が戻り、国が復興してゆく姿が目に見えます。そのためには、現地人による人道(復興)目的の地雷除去活動を力強く継続的に支援してゆくことが、紛争後も残留地雷に苦しむ国々から強く望まれています。

本日、この要望に応えるために各界の方々に発起人としてご賛同いただき、さらに社会の幅広い各層から寄せられる志と善意の受け皿となるべく、JAHDS発足の運びとなりました。
なお発足の目的、運営方針、事業活動、活動計画の詳細に関しましては、参考資料の「人道目的の地雷除去支援の会」JAHDS設立趣意書をご覧下さい。

「人道目的の地雷除去支援の会」JAHDS発起人

代表 飯田  亮 セコム(株)最高顧問
   稲盛 和夫 京セラ(株)名誉会長
   牛尾 治朗 ウシオ電機(株)会長
   小林陽太郎 富士ゼロックス(株)会長
   佐々 淳行 元内閣官房内閣安全保障室長
   佐々木宗和 佐々木硝子(株)社長
   椎名 武雄 日本アイ・ビー・エム(株)会長
   澄田  智 (財)日本ユニセフ協会会長
   多田 宏行 (財)道路保全技術センター理事長
   立石 信雄 オムロン(株)会長
   冨田  洋 ジオ・サーチ(株)社長
   平岩 外四 東京電力(株)相談役
   福川 伸次 (株)電通総研社長
   壬生 基博 (株)第一ホテル副社長
   諸井  虔 秩父小野田(株)相談役
   山本  正 (財)日本国際交流センター理事長
                      (五十音順)


<「人道目的の地雷除去支援の会」(JAHDS) 設立趣意書>

われわれは、今日時代の大きな変わり目に生きている。冷戦終結に伴い、世界の各地で内戦、民族間抗争が多発、増加している中で、グローバルにわが国が果たすべき責任と役割は、以前にも増し重くなりつつある。その一つが国際社会における人道問題の解決とその支援である。
今、世界で解決が求められている人道問題のひとつに埋設放置された対人地雷問題がある。昨年十二月、対人地雷の廃絶を目標に、わが国を含めて世界百二十余ヶ国が禁止条約の署名に参加したことは誠に慶ばしい。しかし、これは問題の解決の端緒にすぎない。世界には既に埋設された対人地雷が、いまだ一億数千万個も放置されたままになっている。それらが、戦火の止んだ紛争地への避難民の帰還を妨げ、そこに暮らす住民の生命を脅かし、更には戦後復興活動の重い足枷となっている。
例えば、カンボジアにはおよそ六百万個の地雷が埋まっており、金属探知機による除去が根気よく行われているが、その作業は極めて危険で非効率なものである。このような従来方式の除去技術による年間の地雷除去数は、全世界でも十万個にとどまり、毎年二万八千人以上(一時間に三人)の無辜の一般市民や子供が、“眠れる兵器”とも呼ばれる対人地雷の犠牲になっている。今日、もっとも憂慮すべき人道問題といわれる所以である。

われわれは、民生技術を結集し、地雷除去作業を安全かつ効率化できる最新の地雷探知技術を一刻も早く完成させ、目に見える国際貢献の一つとして現地地雷除去組織に提供することを計画する。すなわち、人道目的の地雷除去支援を通じて、その土地の復興が誰の目にも見える、成果がはっきり見える活動を行う。また、地雷探知の技術を開発提供するだけでなく、民生技術を広く応用して地雷除去作業に必要なキャンプ資材、電源、照明、運輸、医療、通信などの支援体制も段階的に推進する。
そのために、限りある一個人や一企業ではなく、社会の幅広い各界各層から寄せられる高い志と力強い善意の受け皿となる、非営利の市民活動組織を発足させることを提唱する。

二十一世紀に国を守る本当の力は、武力や経済力ではなく、国際社会でどれだけその国が尊敬され、信頼されるかである。子どもたちへの残留地雷の被害を無くすよう、わが国の全員が知恵を絞って協力することが、ひいては子どもたちに未来の夢を与え、広い視野を持って世界を見ることができ、弱者に対して思いやりを持つ子どもたちを育てることに繋がっていく。われわれは、そういう理念を持つ団体として存在し、活動を次世代にまで継続していく所存である。

平成十年三月
発起人 代表


1.目 的

 本会は、人道的な、非営利目的のNGOとして、対人地雷の被害を受けている地域の女性、子供、一般市民が、地雷の犠牲となり負傷し、命を落とす恐れなしに毎日の生活を送れる日まで、そして、それらの国々の農業・産業の基盤の復興が成る日まで、・民生技術を総合して、地雷探知システムと後方支援システムの開発とその成果の提供をすることにより、地雷被害国における人道目的のための地雷除去活動を包括的に支援すること・上記の目的を補完し、その助けとなる活動を継続的に行うことをもって、わが国の国際貢献ならびに国際的地位の向上及び人道主義の実現に寄与することを、目的とする。

2.運営方針

  1. 任意団体として発足するが、倫理観の高い国際的なNGOとしての活動を行う。
  2. 活動資金には個人および企業等からの寄付金を充てる。
  3. 個人、企業等を会員として、寄付金または会費を徴収する。
  4. 非営利の任意団体として、発起人を中心とした理事会を設け、厳密な運営手続き、および国際的に認められた会計原則、手順に基づいた運営を行う。会計については第三者監査法人の監査を受ける。
  5. 取得する地雷探知システムや、技術ノウハウが軍事目的に利用されることを防ぐ。
  6. 草の根の市民の参加による活動として、人道目的の地雷除去活動を行う国内外のNGO、国際機関、組織等と密接な連携を行い、より多くの支援を得るため、また対人地雷廃絶を一日も早く実現するため、啓蒙活動を行う。
  7. 上記の運営方針に則り、日本国による「目に見える形での国際貢献の実現」に協力する。

3.事業活動
  1. 人道目的の地雷除去関連技術開発。
  2. 国際NGOを含む現地地雷除去機関への関連技術供与、支援。 但し、現地における地雷除去作業に自ら従事することを除く。
  3. 地雷除去に必要な施設・設備類の提供による除去活動後方支援。
  4. 現地地雷除去機関への地雷探知システムの操作、保守・メンテナンスのためのトレーニングの提供、および保守部材の継続的提供。
  5. 将来にわたる地雷除去技術の改良、開発の継続的支援。
  6. 地雷被災地の現地状況調査。
  7. 地雷問題に関する国内外の情報収集および情報提供。
  8. その他、本会の目的を達成するために必要な事業。

4.活動計画(設立発足後3年間)
  1)初年度

  1. 国際的に認知された地雷除去専門家をアドバイザーとして起用し、3ヶ年の支援活動計画の詳細を具体的に策定する。
  2. カンボジアの政府系現地地雷除去機関CMACと協力し、地雷探知・除去技術の実用的要求仕様書を作成・合意する。
  3. 初年度詳細計画、予算および具体的な支援活動と支援対象国については、団体発足時に策定、設立総会・理事会で承認を得る。
  4. CMACの要求仕様に基づいた地雷探知システムの開発開始。
  5. 実用試作機を完成させ、平成10年10月に、日本政府の支援のもとCMACが主催する予定の国際地雷会議にあわせ、現地テストを行う。
  6. 日本政府官公庁、国連機関、国際NGOおよび支援対象国との関係構築。
  7. 効果的な資金調達手段の構築。
  8. 支援対象国への現地調査。
  9. 地雷除去後方支援の要求仕様検討・確認。
  10. 事務局機能の充実。
  11. 各種報道メディアへの広報活動および一般市民への啓蒙活動。
  12. 次年度詳細活動計画策定、予算策定。
  2)第2年度
  1. 地雷探知システムの実用試作機の性能確認、改良を経て初回品出荷。
  2. 実用機供給手段の検討、策定。
  3. 実用機供給開始。
  4. 地雷除去後方支援の試験的供給開始。
  5. 他の支援候補国の検討。
  6. 啓蒙活動の推進。
  7. 第3年度詳細活動計画策定、予算策定。
  3)第3年度
  1. 後方支援を含む地雷除去の支援活動の本格的展開。
  2. 現地地雷除去機関への地雷探知システムの操作、保守・メンテナンスのためのトレーニングの提供、および保守部材の継続的提供。
  3. 将来にわたる地雷探知技術の改良・開発の継続的支援計画策定。
  4. 現地における活動結果のフィードバックと次期3年度活動計画・予算の策定。
  5. 他の支援候補国への転用実現。
  6. 全世界的な活動展開。
以 上




<「人道目的の地雷除去支援の会」JAHDS設立までの活動>

<背景>

  • 冷戦後、世界各地に残留した地雷のために多数の被害者が生じ、復興が進まない事態となった。このため、90年初頭より国連が主体となり地雷除去を開始したが、地雷原の突破目的の軍事的地雷除去方法では、人道(復興)目的の地雷除去で求められる100%の除去目標を達成できないことが判明。やむなく金属探知機を用いた除去方法が行われるが、危険性高くまた効率が低いことより、新しい地雷探知技術開発の必要性が高まる。
  • この問題解決のため、国連は92年8月地雷除去分野の専門家ブラグデン氏(元英国陸軍准将)を地雷除去責任者として起用し、各国の被害状況ならびに新技術リサーチを開始した。


92年11月 道路陥没を防止するため、建設省の要請で91年世界で初めて実用化された空洞探査システムと発明したジオ・サーチ社が海外の学会やメディアで評判となった。これを知った国連初代地雷除去責任者ブラグデン氏が、カンボジア出張時にジオ・サーチ社を訪問。プラスチック地雷探知テストを通じて応用の可能性を見いだし、国連にも報告された。

94年 5月 スウェーデン政府主催の地雷除去専門家会議に、国連の推薦を受けてジオ・サーチ社が参加。悲惨な被害状況と効率的な探知技術の必要性を知ったジオ・サーチ社は、技術検討を開始。

95年 7月 ジュネーブで開催された第1回国際地雷会議において、外務省の要請により、ジオ・サーチ社は自らが考案した地雷探知技術のコンセプトを発表し、今後の探知技術モデルとして高く評価された。ジオ・サーチ社はそのコンセプトを証明すべく試作機開発に着手。

97年 1月 コンセプト証明用試作機「マイン・アイ」が完成。
2月 「人道目的の地雷除去支援を考える会」準備室設立
3月 第1回NGO東京地雷会議に準備室として参加、パネル発表を行う。
7月 現地テスト用「マイン・アイ」が完成。カンボジア情勢急変のため、現地テスト予定が延期。
9月 クロアチア(ザグレブ)で開催された地雷除去専門家会議へ参加し発表。現地視察も行う。
10月 (財)日本ユニセフ協会の支援により、カンボジアにて現地地雷除去政府機関CMAC(カンボジア地雷活動センター)の協力のもと、  「マイン・アイ」現地テストと現地状況の視察を行う。現地テストは世界で初めて従来不可能であった金属を多く含む土質でも地雷を探知し、CMACからも高い評価を得る。活動状況と現地テストの結果をユニセフフォーラムで発表。
12月 オタワ出張直前の小渕外務大臣から要請をうけ、これまでの活動状況を報告。
98年 1月 第2回NGO東京地雷会議に参加、発表。
3月 設立総会を開催、「人道目的の地雷除去支援の会」JAHDSを任意団体として発足。



第3分科会「対人地雷除去活動と除去・探査技術:現状と課題」  98年1月31日
パネリスト:冨田 洋 人道目的の地雷除去支援の会:JAHDS準備室(日本)
      JAPAN ALLIANCE FOR HUMANITARIAN DEMINING SUPPORT

はじめに

まず最初に、この会議において発表する機会を与えていただきましたことに感謝いたします。また、会議を主催された「難民を助ける会」の皆様の献身的な活動に対して心より敬意を表したいと思います。
幸運にも97年は、地雷問題を扱うNGOや関係者にとって特筆すべき年でありました。
私共にとっても「人道(復興)目的の地雷除去支援の会」準備室を昨年2月に設け、今後の具体的な支援計画を立案する上で、貴重な一年でありました。
本日は、この約一年間の私共の活動を皆様にご報告し、そして、試作した新型地雷探知機の現地テストおよび視察結果をもとに、現地人による復興目的の地雷除去活動を技術面で支援する今後の活動についてお話ししたいと思います。

1. 人道(復興)目的の地雷除去の現状

ここに参加されているほとんどの方々が人道目的地雷除去活動分野に関係されており、長々と人道(復興)目的の地雷除去支援の状況についてお話しするつもりはありません。しかしながら、これまで多くの方々からブルドーザー、ローラー等を使って何故地雷除去をしないのか? 無線等の遠隔操作で除去すれば危険ではないと思うといった色々な問い合わせや助言が多く寄せられています。そこで、簡単に説明したいと思います。

1−1 目的
人道目的の地雷除去は、冷戦が終結し地雷による土地の汚染状況や民間人への被害状況が明らかになるにつれて発展した比較的新しい概念です。目的は2つあり、
  1. 地雷による犠牲者を無くすこと。
  2. 残留地雷によって汚染されている土地を浄化し、地元住民に戻し、居住・農業・工業等の復興のための活用をさせること。

そのためには、どれだけ時間がかかっても100%あるいは99.9%の地雷を除去し安全 確保しなければなりません。これまでもブルドーザー、トラクター等機械方式等が数多く試されましたがその信頼性の問題より、今のところ金属探知機やプロッディング(さぐり棒)を用いた手作業が最も確実な方法として採用されています。

1−2 作業環境の違い
残留地雷の被害をうけている国々においては、それぞれの作業環境が異なります。ですから、すべて条件を単一に考えて探知・除去方法することはできません。例えばカンボジアではラテライトと呼ばれる金属分を含んだ土質があり、従来の金属探知機は活用できず、さぐり棒(プロッディング)で探知せざるを得ません。さらに雨期・乾期によって作業性が変わってしまいます。乾期には、土壌が非常に固くなりプロッディングも困難になります。又、雨期は作業のみならず移動も川の氾濫のため大変困難になります。こういった状況とさらに夜間になると安全面においても問題が生じます。例えば、治安上の問題のみならず悪路や人や家畜の道路横断から輸送上にも問題が生じます。
私どもが視察したカンボジアやクロアチアでは、輸送路が整備されておらず、ようやく残った橋も2〜3tonの重量しか耐えられないところもあります。とても重量物を運ぶことができません。又、人が踏み込みやすい畑のあぜ道や木陰に地雷は埋められており、大型ブルドーザー等の機械方式が採用できない理由がよく判りました。また、よく遠隔操作のアイデアを聞きますが、何らかの故障で地雷原に停止してしまった場合に、どうやって回収し修理するかという問題が生じるとともに、現地では修理するパーツの入手が極めて困難であることも知っておく必要があります。

1−3 探知・除去の優先性
紛争後の国々において、復興目的の地雷探知除去活動は、その国々の土地復興の目的によって優先性があります。つまり、すべての地雷を除去するには膨大な時間が必要ですので、その国々の復興優先順位があります。例えば農業立国は、農地となる地域を優先して除去することになります。他方、工業立国は、工場までの通勤路や生産物の輸送路を重視した除去優先順位が高くなります。

2. 人道(復興)目的の地雷除去の解決すべき課題
すべての復興目的の地雷除去活動において、今後解決すべき課題は大きく3つあると思います。

2−1 作業スピードの低さ
使用金属部分が少ない対人地雷が多く残留しており、このため、高感度の金属探知機を用いてオペレーションを行っています。しかし逆に、わずかな金属片まで金属探知機が反応してしまい、反応信号(ピーッという警報信号)箇所すべてを注意深く手作業で掘り確認する必要性から、例えば数百の信号箇所でやっと地雷が1つ見つかるといった状況で、2人1組のチームで1日3〜6m四方の地域しか除去できません。今回 、視察したカンボジア南部の地域では数ヶ月かかって探知した金属信号4,500箇所に対して、やっと1個の地雷が見つかっており、残りはすべて鉄片であったという状況でした。
作業を注意深く観察すると、まず@トリップワイヤーと呼ばれる仕掛け糸の有無の確認。A1m×50cmの地域の草刈り。B金属探知機による探査。C信号が生じた箇所のマーキング。Dさぐり棒を用いた探針作業。Eスコップ等を使用した掘り出し作業というフローで作業が進められています。
この作業のうち、金属探知機を用いた探知作業の時間よりもその前処理である@、Aにかなり時間を要していることが判明しました。ですから、探知技術もさることながらその前処理作業の効率化も重要な課題と思います。

2−2 安全性
前項2−1とも関係しますが、さぐり棒を使用した探針作業とスコップ等を使用した掘り出し作業は危険性を伴います。特に硬い土質ではさぐり棒も短く太めの棒を使用することとなり、よりその危険性が高くなります。
この探針と掘り出し作業を省略化できる方法の考案も重要と思われます。
また作業中に負傷した場合に、応急処置が速やかに行える医療器具や通信・輸送面でのバックアップ体制強化も課題と思われます。

2−3 除去オペレーターの増強
紛争後の国々では、ほとんどの人が失業状態であり、難民キャンプ等の視察でも、日々の仕事を得たいという切実な願いを体感しました。
現状の除去作業は作業スピードと安全性の問題から相当な期間のトレーニングが必要です。私共が注目している点は、復興活動を加速化する上で必要不可欠な地雷除去作業は、あくまで現地の人たちの手で行われることが望ましいと思います。作業の効率性・安全性を向上できる技術支援を通じて、除去オペレーターの増員を容易とし、現地人の雇用機会の拡大になることが復興支援の重要な課題と感じました。
現在人道的地雷除去作業に従事しているオペレーターの総数は商業ベースの地雷除去組織、NGO組織、そして現地人による組織あわせても1万人足らずであり、地雷除去を加速化する上でも、オペレーターの増強が必要不可欠です。

3. 新しい地雷探知機による現地テスト
3−1 現地テストまでの経緯
新しい探知技術は、ジオ・サーチ社が罪のない人々、特に子供たちが被害にあっている惨状を救おうと自社資金で94年より検討し97年1月にコンセプト証明用プロトタイプを作りました。
ジオ・サーチ社は、世界でも珍しい事業を行っています。マイクロ波や種々センサー技術とデータ解析技術そしてフィールドオペレーションノウハウを用いて、毎日のように、日本中で道路陥没原因となる空洞探査・舗装構造調査やコンクリート構造物の中の鉄筋探査等を行っています。
こうした毎日の調査オペレーションで培ったアイデアをもとに考案されたhand-heldtype(手持ち携帯型)の地雷探知装置のコンセプトは日本政府の要請で95年第1回国際地雷会議で発表し高く評価されました。以来、そのコンセプトを証明するための本格的な開発を行い、試作機「マイン・アイ」が完成し、昨年3月のNGO東京会議’97で発表しました。

3−2 現地テスト結果
97年10月(財)日本ユニセフ協会の支援で、カンボジア地雷活動センター(CMAC)の協力のもと、現地の土壌で実際の地雷をターゲットにして現地テストを行いました。
このテストのために、1月にコンセプト証明用プロトタイプをフィールドテスト用に9月までに改良しました。主としてプロセス時間の短縮・小型軽量化に努めました。
さらに、土壌測定のための手法も開発しました。
現地テスト結果として(詳細は添付資料参照)
  1. 世界で初めて、通常の土壌のみならず金属探知機が使用できないラテライト土壌においても、カンボジアで多く残留している対人地雷PMN-2(直径12cm)、M-14(直径5.5cm)の探知に成功。
  2. 不発弾も対人地雷と区別(材質・形状)することに成功


3−3 現地テスト後
現地テストで得た改良項目を検討し、実用化のための検討を継続しています。既にCMACからの助言をもとに今後の実用機イメージモデルを試作しました。
今後の課題としては、まず現地で使用できるための耐環境性向上ならびに処理の高速化等の改良が必要です。
現地テスト後の日本における大きな変化は、これまで地雷除去関連技術は武器と見なされ、海外へ輸出することはできませんでした。この項目については、94年私どもが開発に着手して以来、通産省や外務省等の関係者の方々にご理解と協力を求めてまいりました。そして、皆様のご支援で97年12月「人道目的の地雷活動を支援する目的においては特例として除外」という政府決定がなされ、今後の技術支援に大きく道が拓 かれました。
97年12月2日、小渕外務大臣の要請で、これまでの私共の活動状況とクロアチア・カンボジアの視察結果を説明しました。そして、12月4日オタワでの対人地雷全面禁止条約時の大臣のスピーチにおいて、今後日本として、人道目的の地雷除去活動を技術面で支援する意向が表明されました。

3−4 現地テスト・視察を通じて判明したこと
現地テストや視察の結果、人道(復興)目的の地雷除去活動を技術面で支援するためには、現地地雷除去チームも参画できる体制化で現地ニーズにあわせて地雷探知技術のみならず既存の役立つ技術を改良し提供する必要性が判明しました。現地で役立つ技術項目としては
  1. 防護服  現地の気候にあわせた軽量・作業性の高い防護服
  2. 芝刈り機 探知作業の前処理の効率化
  3. 通信手段 携帯式無線機
  4. 輸送   悪路でも人・機材が運送できる4WDタイプ車輌
  5. 医療   緊急事故の対処するための応急処置
  6. キャンプ機材 耐環境性の高い機材

つまり、探知装置のみでは作業効率・安全性は向上せず、作業者が100%作業に集中できるシステムサポートが望まれています。この分野においても、既に関連技術を有した企業の方々と検討が始まっています。

特に留意すべき点は、現地の人たちが使えるという条件があり、技術支援先として現地人主導のしっかりとした除去組織との共同作業が必要不可欠となります。今回テスト結果以上に成果を挙げられた点は、現地作業を通じてCMAC(カンボジア地雷活動センター)の方々と交流できたことです。現地の人たちに一刻も早く使える畑や土地を戻そうと、毎日過酷な状況下で地雷除去に取り組む現地人のオペレーターの方々のひたむきさ、そして、テクニカルアドバイザーとしてカナダ・スウェーデン・ニュージーランド等の軍隊より、自ら志願して指導にあたっている地雷除去専門家たちの、カンボジアの復興に対する献身的活動に強い感銘をうけました。
CMACには、トレーニングセンターが既に完成しており、今後の技術支援のために必要不可欠なテストフィールドに活用できます。

4. 今後の活動
4−1 正式なNGO組織作り
私どもJAHDSとしては、現地テスト・視察で得られた結果をもとに、日本政府・各産業界・ボランティア団体・市民の方々等と協力して、復興のための現地地雷除去グループに必要な既存技術と望まれている探知技術の無償貸与を前提とした活動を具体化するための組織作りを行っています。
既に、各界におけるリーダーの方々のご賛同が得られることとなり、98年2〜3月には正式な任意団体として発足できる段階となりました。
今後は、現在の日本では困難である法人格取得や非課税条項取得にも取り組み、一般の方々も参画できる体制作りを早期に実現する予定です。

4−2 技術支援計画
  1. 探知技術
    現地テスト結果をもとに実用化を進めており、98年中には現地で試用できるシステム作りに取り組んでいます。
    大変幸運にも、世界初の炎天下でも画面表示できる液晶パネルを実用化したシャープ社の技術無償協力を得られることとなり、本日その試作品も展示していただけました。
    今後の実用化に必要なセンサー分野での技術支援をオムロン社からもいただけることになりました。
    今後さらにソフト関連分野などの企業・技術者に参加してもらい実用化を進めるとともに、現地のオペレーションを通じてのフィードバックをもとに、継続的改良を行える体制作りを行います。

  2. 既存技術
    既に述べましたように、地雷探知・除去技術には作業環境の違いがあり、各国各地域によって求められる技術支援項目と内容が異なります。ですからすべてを満足することは極めて困難であり、対応可能な国または地域を当初は限定して始めながら徐々に拡大してゆくことが必要と思われます。
    私どもJAHDSとしては、アクセスが容易なアジア圏での支援から開始しようと考えています。具体的には既に人的交流もあり、テストフィールドが準備されているカンボジア地雷活動センター(CMAC)とのパートナーシップを通じて、日本の既存技術の中から現地地雷除去オペレーションに役立つ技術の提供を考えています。
    今後、私どもJAHDSのアドバイザーである地雷除去スペシャリスト ブラグデン氏(英国人)やコーディネーターのマクグレガー氏(米国人)の協力のもと、現地担当者と日本企業間の交流を通じて、防護服・草刈り機・輸送機材・通信機器・照明器具・医療機材等の除去作業に集中するためのサポート技術の現地向けへの改良・支援を行う予定です。


4−3 資金計画 既に、一部の心ある方々より寄付の申し出もうけていますが、資金調達は技術実用化 計画とともに重要な課題です。 私どもJAHDSとしては、最初は苦しくても、寄付のみに依存するボランティア活動で なく、NGOそのものが自立できるための資金調達の具体化をするべく積極的に取り組 んでいます。 4−4 啓蒙活動
97年10月以来、(財)日本ユニセフ協会・YMCA・大学等の要望で各地で現状の被害状況や地雷除去の技術面での支援の重要性を中心に啓蒙活動を行ってきました。
今後は、より一般の皆さんに知っていただき協力支援をいただくとともに、新しい時代における日本の役割についても考えていただきたいと思っています。そのためにTBS・東通の方々のボランティアで制作いただいたビデオも完成しました。
98年はより積極的にこの啓蒙活動にも取り組むつもりです。既に2月より、企業・幼稚園・小学校・中学校等の方々の要望で各地で説明会を予定しています。

おわりに
平成元年に創業した私の会社は、道路陥没の原因となる路面下の空洞を迅速かつ正確に発見する事業を主に行っております。世界で初めて実用化し成果を上げたこのシステムを、92年初代国連地雷除去責任者ブラグデン氏(元英国陸軍准将)が冷戦後、軍事的地雷除去方法がまったく役立たない復興目的の人道的地雷除去に応用できないかと訪問をうけました。94年スウェーデンの専門家会議に国連の要請で参加し、罪のない人々、特に子供たちが被害にあっている惨状を知り、何とか助けてあげたいという思いで、独自で新しい地雷探知装置の開発を行ってきました。
そして97年10月にカンボジアで実際にテストをして、従来は困難だったプラスチック製地雷の発見やカンボジアのように鉄分を多く含んだ土地でも力を発揮できることを世界で初めて確認できました。そして、何よりの収穫は、現地で活動している人々が汗まみれになってテストする我々の姿を見て感動してくれ、今後の活動には欠かせない信頼関係を結ぶことができたことです。
地雷が除去されてわずかな広さでもその土地が安全になれば、すぐに畑になり、やがて家が建ち、学校や病院ができます。人々の生活が戻り、国が復興していく姿が目に見えるのです。しかし、例えばカンボジアにはおよそ600万個の地雷が埋まっており、金属探知機による危険な作業が根気よく行われていますが、あまりにもお金と時間がかかり過ぎ、相変わらず地雷の犠牲になる人々が絶えない現状です。
だからこそ、我々は安全でスピードアップできる技術を一刻も早く完成させて提供したいと考えています。また、日本は地雷を作ってはいても悪用したことがない唯一の国です。世界中で地雷除去支援を担うのに最も適した国なのです。人道目的の地雷除去支援によって、その土地の復興が誰の目にも見えて、活動の成果がはっきりわかる、つまり顔の見える支援ができるわけです。
しかしながら、地雷探知の技術を開発提供するだけでなく、作業に必要なキャンプ資材、照明、運輸、医療、通信などのバックアップ体制も含めた活動をするためには、もはや一企業や一個人では無理です。
そこで、各界の皆さんのご協力を得て、強い理念としっかりした組織を立ち上げたいと考え、JAHDS(人道目的の地雷除去支援の会)というNGOを創り、今は一生懸命活動を推進しているところです。
21世紀に国を守る本当の力というのは、実際には武力や経済力ではなく、世界中にどれだけその国が尊敬されるかということではないでしょうか。地雷で手足を失った子どもたちをかわいそうだと思うのは誰でもできます。1歩踏み込んで残留地雷の被害を無くすように知恵を絞ってやっていくことが子どもたちに未来の夢を与えるようになる。自分たちだけが幸せならいいというのではなくもっと広い視野を持って世界を見ていける子どもたちを育てていく。そういう受け皿に私共の団体(JAHDS)はなりたいと思います。そして、次世代を担う若い人たちに確実に引き継いでもらえる活動にしたいと思います。
 是非、私どものこれから具体化しようと考えております活動の主旨をご理解いただき、ご支援いただきたくお願いいたします。


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