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第3分科会「対人地雷除去活動と除去・探査技術:現状と課題」 98年1月31日
パネリスト:冨田 洋 人道目的の地雷除去支援の会:JAHDS準備室(日本)
JAPAN ALLIANCE FOR HUMANITARIAN DEMINING SUPPORT
はじめに
まず最初に、この会議において発表する機会を与えていただきましたことに感謝いたします。また、会議を主催された「難民を助ける会」の皆様の献身的な活動に対して心より敬意を表したいと思います。
幸運にも97年は、地雷問題を扱うNGOや関係者にとって特筆すべき年でありました。
私共にとっても「人道(復興)目的の地雷除去支援の会」準備室を昨年2月に設け、今後の具体的な支援計画を立案する上で、貴重な一年でありました。
本日は、この約一年間の私共の活動を皆様にご報告し、そして、試作した新型地雷探知機の現地テストおよび視察結果をもとに、現地人による復興目的の地雷除去活動を技術面で支援する今後の活動についてお話ししたいと思います。
1. 人道(復興)目的の地雷除去の現状
ここに参加されているほとんどの方々が人道目的地雷除去活動分野に関係されており、長々と人道(復興)目的の地雷除去支援の状況についてお話しするつもりはありません。しかしながら、これまで多くの方々からブルドーザー、ローラー等を使って何故地雷除去をしないのか? 無線等の遠隔操作で除去すれば危険ではないと思うといった色々な問い合わせや助言が多く寄せられています。そこで、簡単に説明したいと思います。
1−1 目的
人道目的の地雷除去は、冷戦が終結し地雷による土地の汚染状況や民間人への被害状況が明らかになるにつれて発展した比較的新しい概念です。目的は2つあり、
- 地雷による犠牲者を無くすこと。
- 残留地雷によって汚染されている土地を浄化し、地元住民に戻し、居住・農業・工業等の復興のための活用をさせること。
そのためには、どれだけ時間がかかっても100%あるいは99.9%の地雷を除去し安全 確保しなければなりません。これまでもブルドーザー、トラクター等機械方式等が数多く試されましたがその信頼性の問題より、今のところ金属探知機やプロッディング(さぐり棒)を用いた手作業が最も確実な方法として採用されています。
1−2 作業環境の違い
残留地雷の被害をうけている国々においては、それぞれの作業環境が異なります。ですから、すべて条件を単一に考えて探知・除去方法することはできません。例えばカンボジアではラテライトと呼ばれる金属分を含んだ土質があり、従来の金属探知機は活用できず、さぐり棒(プロッディング)で探知せざるを得ません。さらに雨期・乾期によって作業性が変わってしまいます。乾期には、土壌が非常に固くなりプロッディングも困難になります。又、雨期は作業のみならず移動も川の氾濫のため大変困難になります。こういった状況とさらに夜間になると安全面においても問題が生じます。例えば、治安上の問題のみならず悪路や人や家畜の道路横断から輸送上にも問題が生じます。
私どもが視察したカンボジアやクロアチアでは、輸送路が整備されておらず、ようやく残った橋も2〜3tonの重量しか耐えられないところもあります。とても重量物を運ぶことができません。又、人が踏み込みやすい畑のあぜ道や木陰に地雷は埋められており、大型ブルドーザー等の機械方式が採用できない理由がよく判りました。また、よく遠隔操作のアイデアを聞きますが、何らかの故障で地雷原に停止してしまった場合に、どうやって回収し修理するかという問題が生じるとともに、現地では修理するパーツの入手が極めて困難であることも知っておく必要があります。
1−3 探知・除去の優先性
紛争後の国々において、復興目的の地雷探知除去活動は、その国々の土地復興の目的によって優先性があります。つまり、すべての地雷を除去するには膨大な時間が必要ですので、その国々の復興優先順位があります。例えば農業立国は、農地となる地域を優先して除去することになります。他方、工業立国は、工場までの通勤路や生産物の輸送路を重視した除去優先順位が高くなります。
2. 人道(復興)目的の地雷除去の解決すべき課題
すべての復興目的の地雷除去活動において、今後解決すべき課題は大きく3つあると思います。
2−1 作業スピードの低さ
使用金属部分が少ない対人地雷が多く残留しており、このため、高感度の金属探知機を用いてオペレーションを行っています。しかし逆に、わずかな金属片まで金属探知機が反応してしまい、反応信号(ピーッという警報信号)箇所すべてを注意深く手作業で掘り確認する必要性から、例えば数百の信号箇所でやっと地雷が1つ見つかるといった状況で、2人1組のチームで1日3〜6m四方の地域しか除去できません。今回
、視察したカンボジア南部の地域では数ヶ月かかって探知した金属信号4,500箇所に対して、やっと1個の地雷が見つかっており、残りはすべて鉄片であったという状況でした。
作業を注意深く観察すると、まず@トリップワイヤーと呼ばれる仕掛け糸の有無の確認。A1m×50cmの地域の草刈り。B金属探知機による探査。C信号が生じた箇所のマーキング。Dさぐり棒を用いた探針作業。Eスコップ等を使用した掘り出し作業というフローで作業が進められています。
この作業のうち、金属探知機を用いた探知作業の時間よりもその前処理である@、Aにかなり時間を要していることが判明しました。ですから、探知技術もさることながらその前処理作業の効率化も重要な課題と思います。
2−2 安全性
前項2−1とも関係しますが、さぐり棒を使用した探針作業とスコップ等を使用した掘り出し作業は危険性を伴います。特に硬い土質ではさぐり棒も短く太めの棒を使用することとなり、よりその危険性が高くなります。
この探針と掘り出し作業を省略化できる方法の考案も重要と思われます。
また作業中に負傷した場合に、応急処置が速やかに行える医療器具や通信・輸送面でのバックアップ体制強化も課題と思われます。
2−3 除去オペレーターの増強
紛争後の国々では、ほとんどの人が失業状態であり、難民キャンプ等の視察でも、日々の仕事を得たいという切実な願いを体感しました。
現状の除去作業は作業スピードと安全性の問題から相当な期間のトレーニングが必要です。私共が注目している点は、復興活動を加速化する上で必要不可欠な地雷除去作業は、あくまで現地の人たちの手で行われることが望ましいと思います。作業の効率性・安全性を向上できる技術支援を通じて、除去オペレーターの増員を容易とし、現地人の雇用機会の拡大になることが復興支援の重要な課題と感じました。
現在人道的地雷除去作業に従事しているオペレーターの総数は商業ベースの地雷除去組織、NGO組織、そして現地人による組織あわせても1万人足らずであり、地雷除去を加速化する上でも、オペレーターの増強が必要不可欠です。
3. 新しい地雷探知機による現地テスト
3−1 現地テストまでの経緯
新しい探知技術は、ジオ・サーチ社が罪のない人々、特に子供たちが被害にあっている惨状を救おうと自社資金で94年より検討し97年1月にコンセプト証明用プロトタイプを作りました。
ジオ・サーチ社は、世界でも珍しい事業を行っています。マイクロ波や種々センサー技術とデータ解析技術そしてフィールドオペレーションノウハウを用いて、毎日のように、日本中で道路陥没原因となる空洞探査・舗装構造調査やコンクリート構造物の中の鉄筋探査等を行っています。
こうした毎日の調査オペレーションで培ったアイデアをもとに考案されたhand-heldtype(手持ち携帯型)の地雷探知装置のコンセプトは日本政府の要請で95年第1回国際地雷会議で発表し高く評価されました。以来、そのコンセプトを証明するための本格的な開発を行い、試作機「マイン・アイ」が完成し、昨年3月のNGO東京会議’97で発表しました。
3−2 現地テスト結果
97年10月(財)日本ユニセフ協会の支援で、カンボジア地雷活動センター(CMAC)の協力のもと、現地の土壌で実際の地雷をターゲットにして現地テストを行いました。
このテストのために、1月にコンセプト証明用プロトタイプをフィールドテスト用に9月までに改良しました。主としてプロセス時間の短縮・小型軽量化に努めました。
さらに、土壌測定のための手法も開発しました。
現地テスト結果として(詳細は添付資料参照)
- 世界で初めて、通常の土壌のみならず金属探知機が使用できないラテライト土壌においても、カンボジアで多く残留している対人地雷PMN-2(直径12cm)、M-14(直径5.5cm)の探知に成功。
- 不発弾も対人地雷と区別(材質・形状)することに成功
3−3 現地テスト後
現地テストで得た改良項目を検討し、実用化のための検討を継続しています。既にCMACからの助言をもとに今後の実用機イメージモデルを試作しました。
今後の課題としては、まず現地で使用できるための耐環境性向上ならびに処理の高速化等の改良が必要です。
現地テスト後の日本における大きな変化は、これまで地雷除去関連技術は武器と見なされ、海外へ輸出することはできませんでした。この項目については、94年私どもが開発に着手して以来、通産省や外務省等の関係者の方々にご理解と協力を求めてまいりました。そして、皆様のご支援で97年12月「人道目的の地雷活動を支援する目的においては特例として除外」という政府決定がなされ、今後の技術支援に大きく道が拓
かれました。
97年12月2日、小渕外務大臣の要請で、これまでの私共の活動状況とクロアチア・カンボジアの視察結果を説明しました。そして、12月4日オタワでの対人地雷全面禁止条約時の大臣のスピーチにおいて、今後日本として、人道目的の地雷除去活動を技術面で支援する意向が表明されました。
3−4 現地テスト・視察を通じて判明したこと
現地テストや視察の結果、人道(復興)目的の地雷除去活動を技術面で支援するためには、現地地雷除去チームも参画できる体制化で現地ニーズにあわせて地雷探知技術のみならず既存の役立つ技術を改良し提供する必要性が判明しました。現地で役立つ技術項目としては
、
- 防護服 現地の気候にあわせた軽量・作業性の高い防護服
- 芝刈り機 探知作業の前処理の効率化
- 通信手段 携帯式無線機
- 輸送 悪路でも人・機材が運送できる4WDタイプ車輌
- 医療 緊急事故の対処するための応急処置
- キャンプ機材 耐環境性の高い機材
つまり、探知装置のみでは作業効率・安全性は向上せず、作業者が100%作業に集中できるシステムサポートが望まれています。この分野においても、既に関連技術を有した企業の方々と検討が始まっています。
特に留意すべき点は、現地の人たちが使えるという条件があり、技術支援先として現地人主導のしっかりとした除去組織との共同作業が必要不可欠となります。今回テスト結果以上に成果を挙げられた点は、現地作業を通じてCMAC(カンボジア地雷活動センター)の方々と交流できたことです。現地の人たちに一刻も早く使える畑や土地を戻そうと、毎日過酷な状況下で地雷除去に取り組む現地人のオペレーターの方々のひたむきさ、そして、テクニカルアドバイザーとしてカナダ・スウェーデン・ニュージーランド等の軍隊より、自ら志願して指導にあたっている地雷除去専門家たちの、カンボジアの復興に対する献身的活動に強い感銘をうけました。
CMACには、トレーニングセンターが既に完成しており、今後の技術支援のために必要不可欠なテストフィールドに活用できます。
4. 今後の活動
4−1 正式なNGO組織作り
私どもJAHDSとしては、現地テスト・視察で得られた結果をもとに、日本政府・各産業界・ボランティア団体・市民の方々等と協力して、復興のための現地地雷除去グループに必要な既存技術と望まれている探知技術の無償貸与を前提とした活動を具体化するための組織作りを行っています。
既に、各界におけるリーダーの方々のご賛同が得られることとなり、98年2〜3月には正式な任意団体として発足できる段階となりました。
今後は、現在の日本では困難である法人格取得や非課税条項取得にも取り組み、一般の方々も参画できる体制作りを早期に実現する予定です。
4−2 技術支援計画
- 探知技術
現地テスト結果をもとに実用化を進めており、98年中には現地で試用できるシステム作りに取り組んでいます。
大変幸運にも、世界初の炎天下でも画面表示できる液晶パネルを実用化したシャープ社の技術無償協力を得られることとなり、本日その試作品も展示していただけました。
今後の実用化に必要なセンサー分野での技術支援をオムロン社からもいただけることになりました。
今後さらにソフト関連分野などの企業・技術者に参加してもらい実用化を進めるとともに、現地のオペレーションを通じてのフィードバックをもとに、継続的改良を行える体制作りを行います。
- 既存技術
既に述べましたように、地雷探知・除去技術には作業環境の違いがあり、各国各地域によって求められる技術支援項目と内容が異なります。ですからすべてを満足することは極めて困難であり、対応可能な国または地域を当初は限定して始めながら徐々に拡大してゆくことが必要と思われます。
私どもJAHDSとしては、アクセスが容易なアジア圏での支援から開始しようと考えています。具体的には既に人的交流もあり、テストフィールドが準備されているカンボジア地雷活動センター(CMAC)とのパートナーシップを通じて、日本の既存技術の中から現地地雷除去オペレーションに役立つ技術の提供を考えています。
今後、私どもJAHDSのアドバイザーである地雷除去スペシャリスト ブラグデン氏(英国人)やコーディネーターのマクグレガー氏(米国人)の協力のもと、現地担当者と日本企業間の交流を通じて、防護服・草刈り機・輸送機材・通信機器・照明器具・医療機材等の除去作業に集中するためのサポート技術の現地向けへの改良・支援を行う予定です。
4−3 資金計画
既に、一部の心ある方々より寄付の申し出もうけていますが、資金調達は技術実用化
計画とともに重要な課題です。
私どもJAHDSとしては、最初は苦しくても、寄付のみに依存するボランティア活動で
なく、NGOそのものが自立できるための資金調達の具体化をするべく積極的に取り組
んでいます。
4−4 啓蒙活動
97年10月以来、(財)日本ユニセフ協会・YMCA・大学等の要望で各地で現状の被害状況や地雷除去の技術面での支援の重要性を中心に啓蒙活動を行ってきました。
今後は、より一般の皆さんに知っていただき協力支援をいただくとともに、新しい時代における日本の役割についても考えていただきたいと思っています。そのためにTBS・東通の方々のボランティアで制作いただいたビデオも完成しました。
98年はより積極的にこの啓蒙活動にも取り組むつもりです。既に2月より、企業・幼稚園・小学校・中学校等の方々の要望で各地で説明会を予定しています。
おわりに
平成元年に創業した私の会社は、道路陥没の原因となる路面下の空洞を迅速かつ正確に発見する事業を主に行っております。世界で初めて実用化し成果を上げたこのシステムを、92年初代国連地雷除去責任者ブラグデン氏(元英国陸軍准将)が冷戦後、軍事的地雷除去方法がまったく役立たない復興目的の人道的地雷除去に応用できないかと訪問をうけました。94年スウェーデンの専門家会議に国連の要請で参加し、罪のない人々、特に子供たちが被害にあっている惨状を知り、何とか助けてあげたいという思いで、独自で新しい地雷探知装置の開発を行ってきました。
そして97年10月にカンボジアで実際にテストをして、従来は困難だったプラスチック製地雷の発見やカンボジアのように鉄分を多く含んだ土地でも力を発揮できることを世界で初めて確認できました。そして、何よりの収穫は、現地で活動している人々が汗まみれになってテストする我々の姿を見て感動してくれ、今後の活動には欠かせない信頼関係を結ぶことができたことです。
地雷が除去されてわずかな広さでもその土地が安全になれば、すぐに畑になり、やがて家が建ち、学校や病院ができます。人々の生活が戻り、国が復興していく姿が目に見えるのです。しかし、例えばカンボジアにはおよそ600万個の地雷が埋まっており、金属探知機による危険な作業が根気よく行われていますが、あまりにもお金と時間がかかり過ぎ、相変わらず地雷の犠牲になる人々が絶えない現状です。
だからこそ、我々は安全でスピードアップできる技術を一刻も早く完成させて提供したいと考えています。また、日本は地雷を作ってはいても悪用したことがない唯一の国です。世界中で地雷除去支援を担うのに最も適した国なのです。人道目的の地雷除去支援によって、その土地の復興が誰の目にも見えて、活動の成果がはっきりわかる、つまり顔の見える支援ができるわけです。
しかしながら、地雷探知の技術を開発提供するだけでなく、作業に必要なキャンプ資材、照明、運輸、医療、通信などのバックアップ体制も含めた活動をするためには、もはや一企業や一個人では無理です。
そこで、各界の皆さんのご協力を得て、強い理念としっかりした組織を立ち上げたいと考え、JAHDS(人道目的の地雷除去支援の会)というNGOを創り、今は一生懸命活動を推進しているところです。
21世紀に国を守る本当の力というのは、実際には武力や経済力ではなく、世界中にどれだけその国が尊敬されるかということではないでしょうか。地雷で手足を失った子どもたちをかわいそうだと思うのは誰でもできます。1歩踏み込んで残留地雷の被害を無くすように知恵を絞ってやっていくことが子どもたちに未来の夢を与えるようになる。自分たちだけが幸せならいいというのではなくもっと広い視野を持って世界を見ていける子どもたちを育てていく。そういう受け皿に私共の団体(JAHDS)はなりたいと思います。そして、次世代を担う若い人たちに確実に引き継いでもらえる活動にしたいと思います。
是非、私どものこれから具体化しようと考えております活動の主旨をご理解いただき、ご支援いただきたくお願いいたします。
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