幸せ色の贈り物


 ドアベルが鳴る。ひょいとドアの隙間から顔を出すと、可愛い十代の少女が二人ポーチに立っている。
「これ、ホリディのプレゼントです!!」
 少女はサンタクロースがプリントされたジップロックを差し出した。
「筋向かいの家の者なんですけど、おばあちゃんが作ったお菓子なんです」
 美しいブルーの瞳は、その言葉が真実だと告げていた。
 こちらの風習に不慣れな私は、ぎくしゃくとした動きで、少女からお菓子を受け取った。
”Merry Christmas and Happy Holiday!!”
 にこやかに笑い、くるりと妖精のように振り向く二人に、ちょっぴり大きな声で私は叫んだ。
”You too!!”
 ジップロックの中身は、溶かしたマシュマロにシリアルを入れて固めた、アメリカ人が好きで,手軽に作れるお菓子だった。クリスマスらしく、シリアルも白とグリーンと赤を使っていた。
 なんだか、心がほんのりと、幸せ色に染まっていく。
  数日後、三軒隣に引っ越してきたご夫婦が、自分達で焼いたフルーツケーキを持ってやってきた。
「これ、ホリディのプレゼントです。これから、よろしく」
 二人の笑顔は爽やかだったし、フルーツケーキもブランデーの香りがして、とても美味しかった。
 予期せぬプレゼントに、また、幸せ色の心になれた。
 24日の夜遅く、主人が郵便受けから何か入っていると、持ってきた。茶色い袋に入ったスパイスだった。家中の空気が、その良い香に染まっていく。
 その良い香を、胸一杯吸い込んだ。
 本当のクリスマスの祝い方や、プレゼントについて、ちょっぴり教えられたような気がした。
 来年は、娘とリンゴのケーキを焼いて、幸せ色のプレゼントを持っていきたいと、今、思っている。
 さて、日本では、サンタがのったケーキを食べているのだろうか。そして、カップルが不慣れなディナーと次の日までのデートを楽しんでいるのだろうか………たぶん、来年も。

1996.12月末


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