みーんな時差ぼけ




サマータイムというかっこいい言葉は、実は母から聞いた。第二次世界大戦後、日本が進駐軍、つまりGHQの支配下にあったときに日本でも実施されたというのだ。その後、何回か日本でも実施すべきではないかという案が国会に出されたりしたこともある。エネルギーが足りないと言われた頃、総理大臣の半袖ジャケットやノーネクタイがクローズアップされた時期に、新聞で読んだ記憶がある。はてさて、その後、どうなったのだろう。

アメリカでは、サマータイムとは言わずに、Daylight Saving Timeと言っている。四月の第一日曜日、午前十二時に一時間時計を早めるのだ。だから、いつもと同じ時間に起きたとしても、一時間遅く起きることになってしまう。一時間の時差など、あまり実生活に関係ないと思われるかもしれないが、案外そうではない。特に、子供たちなど、次の月曜日の朝はなかなか起きられなくて困ってしまう。

Daylight Saving Timeのいいところは、会社や学校が終わった後、まだ日が高いので、レジャーやスポーツを楽しめるという利点がある。まあ、これは定時に退社できる人だけが受けられる恩恵だ。夫とこの話をすると、「俺には関係ないからな」と、仏頂面になってしまう。

子供たちは恩恵を受けているかというと、現地校と日本語補習校、二つの学校に通う日本人家庭の子供たちに限っては、NOだと思う。子供たちは、宿題やら塾やらに追われて、ゆっくりと遊んでいるどころではないし、一緒に遊んでくれる父親が早く帰ってくるわけではない。日没の時間が遅くなって恩恵を受けているのは、夜の運転を嫌がる一握りの母親だけだろうか。

アメリカ人の友人の中には、子供をまだ明るいうちに寝かしつけなければならないので、Daylight Saving Timeに反対だとういう人もいる。

でも、私が一つだけ気に入っているのは、十月になって一時間、時間が戻ったときだ。いつもと同じように起きても、一時間は時間を得してしまう。そんなとき、その時間を自分のためだけに使えるからだ。しかし、体もどんどん時差に慣れてしまうので、そういう美味しい思いができるとは、いいところニ週間が限度なのだが。

四月、町ゆくひと、フリーウェイで自動車を運転している人、なんだか眠そうな顔をしているように思えてしかたがない。そう、みーんな、時差ぼけで寝不足なのだ。



このエッセイはInfo Ryomaのコラムに書き下ろしたものです


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