Happy Holidays




12月はベーキングの月。つまり、オーブンで何かを焼くことのとても多くなる月だ。学校や幼稚園、同じ年齢の子供の集まりなどでは、クッキーデコレーションといってシュガークッキーにアイシングやスプリンクルで飾り付けをして遊ぶ。各家庭で焼いたクッキーを交換しあう、クッキーイクスチェンジもよく行う。

アメリカに来て初めてのクリスマスには、クリスマス前に入れ替わり立ち代りクッキーやパウンドケーキを片手に現れるご近所さんに驚いたものだ。手作りクッキーが3種類ぐらい載った紙のお皿を受け取っても、どうしていいかわからず、困ったような顔をして私は玄関に突っ立っていたにちがいない。その後、私が英語を習っている女性から、アメリカではクリスマスシーズンに近所に暮らす人にクッキーを配る習慣があることを教わった。次の年からは、子供達と作ったジンジャーブレッドやクッキーを配った。数年前からは、クッキーにこだわらず、私の十八番であるマドレーヌを焼いて配るようになった。日本人のマドレーヌは彼等にはどう思われているのだろうか。「レシピを頂戴」と言われたこともあるので、まあまあというところだろうか。

キッチンでバターの入ったお菓子を焼くときの香りは、本当に人を幸せにしてくれる。それを配って歩くときの、なんとなくこそばゆいような気持ち。そして受け取ってくれた人の笑顔を見ると、本当に嬉しくなる。一皿のクッキーや、片手に載るようなわずかなマドレーヌで、暖かな気持ちを交換しあっているように感じるのだ。

私の友達の中には、今年一年、あまりいい年ではなかったり、試練を受けたという家族に特別クッキーを焼いて持っていき、少し話しをするという女性がいる。クッキーを受け取った家族は、彼女に話を聞いてもらえること、そしてその女性が忙しい時間を使ってクッキーを作り持ってきてくれたことにとても感謝すると言っていた。

こういう話を聞くと、日本のお歳暮もいいが、クッキーを配るという習慣も素晴らしいなと思ってしまう。

昨日は、一人暮らしの年老いたベティーが、「上手に作れたか不安だけれど」と、クッキーを持ってきてくれた。ユダヤ教を信じているビィブからは、"Happy Holidays"という文字といっしょにブルーの地にハヌカで使うキャンドルスタンドがプリントしてあるシールが貼ってあるパウンドケーキをもらった。この家のパウンドケーキはとってもスパイシーだ。それぞれ、家ごと、主婦ごとに十八番のお菓子が違っている。また、みんな信じている宗教も違っている。でも、これでいいんだと思う。

そうだ、こんな言葉を教えてもらった。
It's not what you get, it's the love you give.

さて、私も焼きあがったマドレーヌを袋につめて、小さな愛を配りにいくとしよう。

December 23, 2003


このエッセイはInfo Ryomaのコラムに書き下ろしたものです


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