早いもので、もう10月も終わろうとしている。
アメリカでは、ホリディシーズンが徐々に幕を開けようとしている。その前座が、10月31日に行われるハロウィーンだ。
ハロウィーンはケルト人の祭りが起源らしい。それがキリスト教に取り込まれたのだそうだ。ケルト人は死者の魂がこの日の夜に家へ帰りつくと信じていたらしい。キリスト教では11月1日が万聖祭なので、その前夜祭として祝いだしたのだという。All Hallows Evenが縮まって、Halloweenになったという。
その夜、子どもたちはそれぞれ、自分の好きなキャラクターに変身してご近所のベルを鳴らす。"Trick or treat!"(お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ)と、叫びながら。このハロウィーンになくてはならないもの、それは、パンプキン、つまり、かぼちゃだ。
日本の緑のかぼちゃではない。ディズニーアニメのシンデレラに出てくるような、大きくてオレンジ色のどてっとしたパンプキンが必要なのだ。
なぜならば、このパンプキンで、ジャック・オー・ランタンを作るからなのだ。
中身をくりぬいたパンプキンに、目鼻口をつけ、その中に蝋燭を灯す。それを玄関先に置くのだ。とても素敵で幻想的だ。
そのランタンがあると、家人がいるということなので、子どもたちは喜んで呼び鈴を鳴らしにくるわけだ。10月にはいると、色んなところの空きスペースが、パンプキンパッチに変身する。
空き地や駐車場の一郭に藁が持ち込まれ、オレンジ色のパンプキンたちがずらりと並べられる。こういった青空市場のことを、パンプキンパッチと呼んでいる。
さて、このパンプキンパッチだが、手の込んでいるところは、それは楽しめるスペースになっている。
大きな農場がやっているパンプキンパッチでは、ウサギ、七面鳥、アヒル、ロバ、ヤギ、ニワトリの小屋がパンプキンパッチの中にある。入り口には干したトウモロコシが山積みしてあり、子どもたちはそのトウモロコシを、動物に与えることができる。また、小さな線路までひいてあって、子どもは列車にも乗れるようになっている。
小屋や線路以外には、インディアンが住みそうなテントが張ってあり、子どもはその中で存分に遊べるのだ。
こんな夢のようなスペースの中に、ごろごろとパンプキンは転がされている。子どもが夢中で遊んでいる最中に、親たちは足先でパンプキンを蹴飛ばし、転がししながら、品定めをするのだ。そして、頃合いの別嬪さんを見つけると、赤い一輪車にそれを載せ、レジまで運んでいく。なんだか、のんびりしていて、その空間にいるだけで幸せになってしまう。
このパンプキンパッチは入場無料だ。遊べるだけ遊んで、それで帰ってくることもできる。私は、大きなのと小さなパンプキンを買った。
レジでお金を払うときに、連れてきた子どもの数を聞いてくれる。何事かと思って待っていると、子どもには一人一枚ずつ、かぼちゃの形をしたクッキーが振る舞われていた。ああ、自分がもし子どもにもう一度なれるなら、アメリカで育ちたい、そう思いながら積み重ねた藁に突進して歓声を上げている自分の子どもたちを、微笑みながら見守っていた。
1998/10/29